Yahoo!基金知らせる力レポート#4 女性が輝く場をつくりつつ、リーダーを育てて草の根のネットワークを強化。被災地から日本の未来を変える!

2011年3月の東日本大震災によって未曽有の被害を受けた三陸海岸沿岸地域。その緊急支援に携わるなかで「女性のまなざしは、くらしの課題、社会的な弱者に敏感」なことに気づいた人たちが、女性たちの支援をしなければとスタートさせた活動が、今さまざまな形で広がりを見せています。
例えば子育て中のママたちがお互いに支え合えるようにしたり、クラフト製品や食品などの手作りのアイテムを小規模に販売している人たち同士をつないだり。女性たちが地域やコミュニティーや社会的事業で力を発揮するために学ぶ機会を作ったり。被災地に外の人を呼び込むための交流イベントを開いたり。
女性ならではの視点を生かした防災・減災プログラムを開発したり。宮城県南三陸町を拠点にそんな多彩な活動を展開しているのが、特定非営利法人 ウィメンズアイです。
代表理事を務める石本めぐみさんは、東日本大震災が起きた後に三陸沿岸に入り、市民ボランティアとして活動していた人。非常事態下の避難所で、家をなくし、家族をなくした高齢者たちや赤ちゃんたちを支える女性たちの姿を見て、「この人たちを支えなくては!」と思ったのが、彼女の活動の原点だったと言います。

特定非営利法人 ウィメンズアイの代表理事、石本めぐみさん。被災地の未来を担う、才能とやる気にあふれた女性たちをバックアップする活動を展開する。自らも今なお大学院で学び続けている、バイタリティーあふれる女性だ。

「震災前は金融会社の役員秘書を10年続けていました。そのなかで、企業のCSRやボランティアといった活動が本当に社会にインパクトを与えられるものになるにはどうしたらいいかを考えるようになり、働きながら大学院に通い、NGOやNPOのアカウンタビリティーやファンドレイジングについて学びました。そうしたら、だんだんそちらを本業にしたい、海外で支援活動をしたいという気持ちが大きくなって。それで、震災の3日前に会社を辞めます! と上司に伝えました。
ところが、その直後にあの大震災が起きた。国際支援とか言ってる場合じゃない、自分の国の危機なんだ、と衝撃を受けました。最初は会社で募金活動を取りまとめたりしていたのですが、いても立ってもいられなくなり、4月に石巻に災害ボランティアに行きました。その時に見た沿岸地域の光景が胸に焼き付いて。それで、退職したらすぐにここに戻って来ようと決心し、5月からとりあえず3ヵ月の予定で宮城県登米市を拠点とする市民ボランティアの現場に飛び込んだんです。始めて数日後に配属されたのが、市内8ヵ所にある避難所で女性支援を始めようとしていた地元の女性団体と行政のサポート業務でした。最初は女性ならではの物資の配布などをしていましたが、徐々に女性のサロン活動などもサポートするようになりました」

最初に被災地に飛び込んでから半年は寝袋生活を続けていたという石本さん。登米市を拠点に2年間支援活動をした後、NPO法人化。現在は関東に拠点を置きながら、東北の宮城、岩手、福島に足繁く通い、女性たちが力をつけるための手助けをしている。

そこで石本さんが気づかされたのが、女性たちに求められるものの多さでした。
「被災地では社会的弱者=災害弱者となります。乳幼児、要介護の高齢者、障がい者など、災害弱者のそばにいるケアワーカーも家族も、ほとんどは女性たちでした。男女で役割を分けるわけではないのですが、実際そうならば、この女性たちをサポートしなければ、と。そこで、避難所で集まって話ができる場を作るためのサロン活動が始まり、地元の女性団体が化粧品会社の人などを招いてハンドマッサージやフェイシャルマッサージを行いました。すると、最初は緊張して固くこわばっていた女性たちの気持ちがほぐれて、優しい空気が生まれていくんです。東北に限らず日本の地方にはそうした傾向がありますが、女性が負わなければならない大事だけれど非公式な役割が多い。それを実感しましたね」

石本さんはその年の6月、そこで出会った仲間たちとともにウィメンズアイの母体 となる任意団体RQ被災地女性支援センターを設立。当初は地元の行政や市民団体と連携しながら、女性や社会的弱者が置き去りにされることがないように、また安全な立場に置かれるように、さまざまな支援活動を展開していきました。それから2年が経過し、被災地の状況が緊急支援期から生活再建期へと移行するのを受けて、これまでの活動から得た経験を生かしつつ、女性の社会参画と災害への備えの必要性を長期的に、かつ広く市民社会に啓発していくことを目的として、NPO法人ウィメンズアイとして新たなスタートを切ります。

東北3県の次世代を担う女性たちが集まり、学び、ネットワークを構築する目的で開催される「グラスルーツ・アカデミー東北」。写真は2017年5月に3日間の会期で開催された宮城県での様子。「多様性を生かす」というテーマのもと、19名が学びを深めた。(協力:特定非営利活動法人ジェン、撮影 古里裕美)

「活動を続けるなかで直面したのが、昔ながらの家父長制が色濃く残るなかで女性たちの活躍が阻害されていることでした。公の場に出て来て決め事に関わるのは年配の男性ばかり。私も田舎の出なのでわかりますが、女性たちは言われたことをやっていればいいのだ、意見を持つ必要はないという空気がいまだにまかり通っている。でも、震災後に自分たちの暮らす地域を変えたい、良くしていきたいという女性たちが東北各地にはたくさんいて。特に20〜30代の女性たちにとっては、支援活動などで外の人がたくさん入って来るこの時期は価値観を転換する、もしくは少しだけでも新たな価値観が認められるチャンスでもあったわけです。そこで、私たちは意思決定の場にいる人たちといかに対立せずに、若い世代の女性たちの活躍の場を作っていけるか、さまざまな形での支援にトライしていくことにしました」

「地域の子どもの出生数の激減と若い女性の相関をデータ化して出すと、ようやく男性たちも危機感を持ってくれるんです。このままでは日本の田舎では800市町村から子どもを産める若い女性がいなくなる。震災はそれに拍車をかけた。それなら、故郷のために立ち上がる女性たちを応援しなきゃと言ってくれます。」と話す石本さん。

最初にも挙げたように、石本さんたちの活動は多彩。特にユニークなのは、東北の若い女性たちが力をつけ、草の根でつながりながら地域を良くしていけるように、地域女性リーダーやコーディネーターを育成する活動を展開していることです。
「数年前に“消滅市町村”という言葉が出てきましたが、被災地、特に沿岸部ではそれが猛烈なスピードで進んでいる。子どもを生むことができる若い女性たちが地元から離れますから、必然的に消滅市町村への道をまっしぐらです。行政は子育てしやすい町作りなどを掲げていますが、現状では若い女性が住みやすい町とは言えない。せっかく大学を出て、都会でキャリアを積んでも、“女は家にいるものだ”、“女ごときに何ができるんだ”という風潮では、一度出た女性たちは戻ってきません。だからこそ、地元にいて立ち上がる女性たち、Uターンしてくる女性たち、縁あって暮らすことになった女性たちを支えなきゃいけない。そこで、東北3県の若い世代が参加、地域の先輩リーダーを招いて研修を行う『グラスルーツ・アカデミー東北』を主催しています。ここに参加しているのは各地域のキーパーソンが“今後この人たちにリーダーシップをとってほしい”と推薦する人たち。子育て支援者、弁護士、教師、産後ケアに取り組む人など、分野を超えた人材が集まっています」

2017年6月に南三陸町入谷「ひころの里」で開催したひころマルシェでのひとこま。2月にWEがオープンしたシェア加工場「パン・菓子工房oui」の3つの利用者がパンの販売で共同出店した。

また、直接仕事のスキルアップやビジネスのスタートアップにつながる活動も。最近では南三陸町に共同で使えるパンとお菓子の工房「oui(ウィ)」を建設し、「小さく始めたい」「趣味から一歩踏み出したい」と思う女性たちがパンや菓子を製造・販売するチャレンジをサポートしています。現在15人がこの工房に利用登録し、作った商品は主に地域のイベントに出店して販売しています。ゆくゆくはお店を持つことを目標に頑張っている女性もいます。
「このプロジェクトのリーダーをしているのがウィメンズアイの事務局長の栗林美知子という女性なのですが、彼女がパンが大好きなこともあり、農家さんと一緒に無農薬で麦を育てたり、地元の小豆を使ったりと、地元の素材でその町の良さをアピールする商品づくりを考えているようです。工房の利用は今年から始まり、東京からプロのパン職人さんを招いてのパンの教室も行っています。2019年にはワーカーズオーナーシップをもとに、時間とスキルを持ち寄った新しい働き方を見つけるべく、協同組合の設立を目指しています」

「ひころの里」シルク館で、染織作家の先生の指導のもと、この土地の失われていた技術を蘇らせる連続講座を開催した時の様子。講座を通して地元の繭を使って糸づくり、織物づくりを行う技術を身につけた地元の女性たちが、体験講座のインストラクター、商品づくりなどで活躍している。

被災地での女性視点の地域づくりへの貢献が認められ、最近では熊本の被災地に招かれたり、女性のリーダーシップの講演をしたりと多忙な日々を送る石本さん。現在は全国を飛び回りながら、大学院の博士課程で学び続けてもいるのだそうです。
「地域でリーダーシップをとる女性たちを育てることで、地域が変わっていく。女性が活躍できなければ、地方の町からはあっという間に人がいなくなります。地方にはいいところがたくさんある。心を豊かにする美しい自然、資源の豊かさ、食べ物のおいしさ。本当なら地元で働き、子育てもしたいと考えている女性たちはたくさんいます。私は元気な若い女性たちが被災地から日本を変える! と信じています」

撮影 榊 水麗 /取材・文 山下紫陽/企画制作・リベルタ


特定非営利法人 ウィメンズアイ

女性たちが、地域、社会につながるプラットフォームとなることや、女性たちが必要な力をつける機会をつくること、災害を経験した女性たちの声を内外に届けることなどをミッションとし、女性が自らをいかし元気に活躍できる社会を目指して活動しています。

ウェブサイト:ウィメンズアイ


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