恩を返すだけでなく、誰かに送る。僕らの東北支援の新しいカタチ ~Support Our Kids~

東日本大震災から早6年。現在も多くの団体が復興支援活動を続けています。
その中の一つ、各国の駐日大使が理事に名を連ねるSupport Our Kidsプロジェクトは、被災児の自立支援、復興のリーダーづくりを目的に、2011年6月に発足しました。
主な活動である、復興の担い手となる子どもたちの自立心を育むことを目的とした中高生の「海外ホームステイ」プログラムは、2017年3月現在、340人超の参加者を数えます。(Support Our Kids公式ウェブサイトより)

今回、2012年の「海外ホームステイ」プログラムの参加メンバーである白井森隆さんに、海外派遣に参加した経緯や、東日本大震災当時のこと、派遣先であるイギリス・ロンドンでの体験について伺いました。さらには、白井さんが代表を務め、Support Our Kids の OB/OG によって発足した学生による復興支援団体 HABATAKI(ハバタキ)のこと、東北の未来についても語っていただきました。海外経験によって培われた自立心は、震災という経験を乗り越え、人と人をつなぐ大きな翼となっています。(ヤフーの社会貢献)

「荒浜に数百もの死体」―ラジオのニュースが忘れられない

インタビューを受ける白井さん。東日本大震災後、Support Our Kidsの海外ホームステイプログラムを体験。
―白井さんは、仙台市内のご自宅で被災されたと伺いました。震災ではどんな体験をしたのでしょうか。
白井森隆さん(以下、白井)「当時、僕は高校1年生でした。自分の部屋にいたのですが、揺れで部屋中のものが次々に崩れていく光景を覚えています。僕はそれを見るのが怖くなり、布団をかぶって揺れに耐えていました。少しおさまったので顔を出してみると、本棚が目の前で倒れていました。もし棚がベッドの上に倒れていたら自分はどうなっていたのだろうと考え、さらなる恐怖を感じました。
そのあと、家にいた母、姉と一緒に、近所の祖父宅に避難しました。避難中、ラジオから流れてきた『荒浜で数百の死体が発見されました』というニュースを忘れることができません。当時、テレビがつかず津波がどれだけの被害を及ぼしたのか知らなかった僕にとって、そのことを事実として理解するには時間がかかったように思います。
市役所に勤める父は避難してきた方々の対応に追われ、再会できたのは震災発生から 2,3日たったあとでした。」

―Support Our Kidsが行う海外派遣に応募した経緯を聞かせてください。
白井「学校の授業の中でも英語が好きだったこともあり、もともと海外に興味がありました。震災後、僕は受験生でしたが、ある企業が募集する海外ホームステイプログラムに応募しようと思っていました。先生からは『海外は、大学に入学してからでも行けるから』と言われ、いったんは思いとどまったのですが、その数日後に、別の方から Support Our Kids を紹介されたのです。『これは、神様が海外に行けと言っているに違いない』。そう感じた僕は、先生に内緒で応募しました。
派遣先としてロンドンを志望したのは、パンクロックが好きだったこと、当時、イギリスの議会政治について習っていたこと、そして何よりサッカーが好きだったからです。面接では、復興に関わっていきたいという話もしましたが、海外に行きたい気持ちが強すぎて、その気持ちを伝えるのに必死でした。今となっては何を話したのか覚えていません。」

ロンドンという非日常な環境が、僕に立ち上がる勇気をくれた

Support Our Kidのホームステイプログラムで、日本から一緒にロンドンに行ったメンバーたちと。
―ロンドンでのプログラムはどういった内容でしたか。
白井「2週間のホームステイプログラムです。平日は語学学校に通い、ドイツやロシア、ウズベキスタンなどからやってきていたの同世代の人と授業を受けました。午後は現地の小学生とサッカーをしたり、大英博物館、アビーロードなどの観光地に出かけたりと現地でしかできない体験もしました。ちょうどロンドンオリンピックと重なり、レスリングも観戦させてもらいました。」

―印象深い出来事はありましたか。
白井「Support Our Kidのホームステイプログラムで、日本から一緒にロンドンに行ったメンバーとの出会いでしょうか。メンバーのなかには、いまだにお父さんが見つかっていない人、津波で農場が流され、両親が仕事を失ったという人もいました。そういう話を聞くたび、『自分は本当に被災者なのか』『このプログラムには、自分よりも深刻な体験を持つ人が選ばれるべきではないのか』と、思い悩んだりもしました。
でも、メンバーと長い時間をともにし、深い話を重ねていくうちに、自分は自分でいいのではないかと思えるようになりました。僕は、ときに東日本大震災そのものや自分の体験を忘れてしまいそうにもなりますが、その一方で凄まじい体験をしたメンバーの気持ちを自分ごとのように推し量ることもできます。その両方のバランスが取れる僕だからこそ、できることがあるのでは、と考えられるようになっていきました。」

―そう思えるようになったきっかけはありますか。
白井「海外という非日常のおかげだと思っています。変に構える必要がないぶん、心が解放される。おかげで、自分自身や仲間のつらかった体験、そして自分たちの将来の夢を受け止めることができました。受け止めたら、あとは立ち上がるだけ。立ち上がる勇気も自然と湧いてくるというか。Support Our Kids のホームステイプログラムは、僕らの心を強くするチャンスを与えてくれたと感じています。」

自分たちの力で羽ばたき、恩を返すだけでなく、次の誰かに送りたい

HABATAKIの活動でネパール地震で被災した高校生たちを日本に招待。
―そんな白井さんをはじめとする、Support Our Kidsの参加メンバーが、立ち上げたのがHABATAKIですね。これまでにどんな活動をしてきたのでしょうか。
白井「最初の活動は、震災で離ればなれになった石巻の子どもたちの再会を支援することを行いました。加えて、Support Our Kids が毎年行う体験発表会で、復興とは何かを考えるシンポジウムの企画・運営を行ってきました。」

―2015年に起きたネパール地震のときには、現地の学生を仙台に招待するプロジェクトを実施したそうですね。
白井「はい。活動資金を、募金とクラウドファウンディングで用意したのですが、当初は思うように集まらず、プロジェクトのためのお金を集めることがどれだけ大変なのかを身をもって知りました。同時に、一つのプロジェクトには、たくさんの人の思いが詰まっていることを改めて感じました。いままで自分たちを支えてくれてきた方々への感謝の気持ちを新たにするとともに、大きな学びの機会となりました。
さらに HABATAKI の活動は後輩にも受け継がれ、熊本地震の際には、被災した高校生を福島へ招待するプロジェクトが後輩たちの手によって実施されました。」

「このように、HABATAKI の活動を通して、人とのつながりや誰かにとっての新しいチャンスが生まれていく様子を目の当たりにすると、Support Our Kidsのプログラムで支援を受けた僕らの使命は、支援してくださった方々への感謝の気持ちを持つことだけでなく、小さなレベル、まずできることからでも東北復興に関わり、貢献していくことだと思うようになりました。」

「団体の名称である HABATAKI には、今まで支援を受けて羽ばたいていた僕らが、今度は自分の力で羽ばたいていきたいという思いをこめています。海外派遣を通し、たくさんの絆を紡ぐことができました。次は、僕たちがいただいた恩を返すだけではなく、誰かに送ることができれば、と考えて活動しています。それが結果的に、さらに多くの方々への恩返しにつながると考えています。」
お別れのハグ。支援していただいた方々への感謝の気持ちが、あらたな絆を紡ぐ。

チャンスをくれたすべての人に報いるために

各国の言葉で書かれた復興の"輪"。「東北×ネパール復興の輪プロジェクト」にて。
―Support Our Kidsの活動は、白井さんにどんな影響を与えたのでしょう。
白井「世界の大きさを知るチャンスを与えてもらいました。良い刺激を与えてくれるメンバーとの出会いも財産になっています。そして、いざ新たなアクションを起こしたいとなれば、全力でバックアップしてくださる方々にも恵まれました。Support Our Kidsでの経験が、今の自分に確実につながっていると感じています。
このチャンスをくださったすべての方々の気持ちに報いるため、この体験や気づきを自分の人生にどう反映していくべきか、いま真剣に考えています。これは僕だけに限らず、Support Our Kidsのプログラムに参加したすべてのメンバーが持っている想いではないでしょうか。」
すでに東北の未来に向けられている、白井さんのまなざし。その瞳には東北の復興の情景がまざまざと映っているかのようです。震災による「喪失」を「創出」に変えていく、若い力。その力を役立てるきっかけとチャンスを提供するSupport Our Kidsの活動は、未来への投資の重要性を感じさせてくれます。

Yahoo!ネット募金ではSupport Our Kidsの支援を受け付けています。いま必要な支援の先にある、東北の未来への投資にもぜひ目を向けてみてください。


取材・文=香川妙美(リベルタ)
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    Support Our Kids 実行委員会

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